刊行によせて

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 この冊子の上梓に当たっては、いくつかのご縁があったことを語らなければならない。きっかけは、私が神主の資格をとろうとしたことにある。そのとき紹介されたのが、福王子神社(京都府京都市右京区宇多野福王子町)の村田宮司であった。人柄だけでなく、その日常の所作も素晴らしい方であった。今から四年余り前、資格をとるための講義の一つとして『古事記』の神話時代の神様の話を村田宮司がされた。簡単なレジュメを基に語られたのだが、それまでの『古事記』の話や本などでの妙に判り難い内容とは異なり、きわめて判りやすく、一般の人が関心を寄せるに値すると直感した。

 早速、村田宮司に下北半島の小さな旬刊紙への連載を依頼した。我が国のバイブルである『古事記』を判りやすく読み親しんでもらうためである。講義として聞かせていただいたものよりも、より判りやすく面白く深みのある内容になっていたように感じられた。何よりも村田宮司の人柄がそのまま表れた書きぶりで、優しさと慈しみにあふれたものであった。この連載の完結に当たって、これを広く青少年や高齢者にも読んでほしいと願うようになり、私が理事長をしている公益財団事業の一つとして取り上げてもらうことにした。
 我が国の成り立ちや祖先を単に神話として見るのではなく、今を生きる人々のアイデンティティを改めて問いかけ、感じてほしいと願った次第である。村田宮司の逡巡を解消し、冊子の制作に前向きにさせてくださったのは、同じく神主講習を受けた編集者でありプロの建築カメラマンでもある小林浩志氏であった。一層面白く、興味を引くような写真や神様の系統図をもって、解説していただいた。
 素晴らしい読物になったと自負している。同時にこれが広い年齢層の方々に読まれることを願っている。ちなみに、神主講習の途中で挫折した私と異なり、小林氏は見事神主の資格を得られたことを申し添える。
 このような経緯をたどって、こうした冊子になったことは望外の喜びである。公私共にご多忙の中にあって私の願いを聞き届けてくださった村田宮司に心からお礼を申し上げるとともに、このような冊子の出来映えに仕立て上げてくださった小林神主にお礼を申し上げたい。
 ちなみに、村田宮司の福王子神社は、地域の氏神で宇田天皇の母である班子皇后を祀る仁和寺の鎮守神であり、社殿が国の重要文化財であることを申し添える。
 
 令和二年十二月一日

 公益財団法人地域開発研究所
理事長   濱 崎 正 明

 
神々の物語「古事記」著/村田健史
編集/株式会社スパイラル
税込4,950円
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